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私的ジョルジョ・モランディ(Giorgio Morandi)の眼差し

  • 1 分前
  • 読了時間: 4分

私たちが生きる今は、デジタル化の加速によって、パッケージされたコンテンツが供給過剰の状態に陥っている。


また、そんなコンテンツを制作するにあたっては、事業計画、戦略、コンセプト、ストーリー、スローガン、目的、目標、マーケティング、デザインなどのフレームや意図を明確にしつつ、多くのチームが日々研鑽を重ねている。筆者の私も普段はそんなチームに身を置いている。大量かつ高品質なコンテンツをチームで作るには、この意図やフレームワークの明確化が重要な鍵になる。


楽しませなきゃ、笑わせなきゃ、伝えなきゃ、満足させなきゃ、売らなきゃ、驚かせなきゃ、感動させなきゃ、足を止めなきゃ。


ただ、こうした行為は哲学者の三木清が指摘したロゴス偏重が加速している時代の現れでもある。最近ではさすがに巷に溢れる大人の意図にうんざりし、疲労感や徒労感を覚えることもままある。


こうしたコンテンツの大量生産と過剰接続の時代に生まれた若者たちは、自然と自分たちにフィットするもの、使っていて心地よい、なんかいい、と感じるモノ・コトを新旧、和洋中など問わずに選びとっているように思える。


この自然にフィットする、使っていてなんか心地いいと感じるものづくりは、果たして、前述したようなコンテンツ制作のワークフローの中からだけ生まれるものなのか?「否」ではないか?


イヴ・サンローランは、


「私はドレスを作る前に描くのではない。描くことでドレスが現れるのだ。」


というような内容のことを繰り返し述べている。


 ・スケッチは設計図ではなく創造行為そのもの

 ・線を引くことでシルエットが現れる

 ・直感的ドローイングから構造が決まる


ジム・ジャームッシュは、


I prefer to think of my films as experiences rather than narratives.

(私の映画は物語というより体験だと考えたい)


というような内容のことを述べている。

映画自体の企画や脚本主導への違和感である。


三木清の師匠にあたる西田幾多郎は、それを 行為的直感 と述べている。考えてから動くのではなく、動くことの中に認識が生まれるという考え方である。


前置きがだいぶ長くなってしまったが、作品が意図的でなく、研ぎ澄まされた感覚的なもので良いという見方は、仏教哲学にある空の概念がヒントになるのではないだろうか。空とは、すべての存在は固定した実体を持たない、という仏教哲学の根本概念の一つ。空の視点に立つと、作品もまた鑑賞者の間に生じる関係性によって常に変化し続ける。その間に立ち上がる認識、意味づけなども千差万別である。


わたしは、この空観をジョルジョ・モランディの中に感じるのである。モランディの作品群は、言葉にすると「同じモチーフの連作」と書いてしまうが、空観的に捉えると千差万別となる。


モランディの作品群はモチーフや主題を削ぎ落とすことで、空観を浮き立たせ、さらに見た人の直感や知覚を刺激する作品を目指して制作されたのではなかろうか。


連作の中に描かれている光や空気の揺らぎが、それを捉えようとする人間の知覚を僅かに刺激することで、見る度に認識を僅かにずらしてゆく。


つまり、同じではなく無限、意味が先行するのではなく、まずあるのは認識。

その構造を理解し、人の知覚と認識に働きかける作品に挑み続けたのがジョルジョ・モランディなのではないだろうか。


そんなジョルジョ・モランディの作品を眺めていると


 関係性の間に存在する意味を形作る認識という現象

 それを刺激する知覚のデザイン

 これらが繰り返される無限の運動体


というものに俄然興味が湧いてくるのである。

こういった視点から捉えるコンテンツのワークフローは、仏教哲学を持った東洋人こそ得意にできるものではなかろうか。


大仰なコメントになってしまうが、今後の日本のコンテンツ産業の可能性もこの視点が一翼を担う可能性があるのではないかと思う。

Text & Edit_Shinichi Saeki

ジョルジョ・モランディ(Giorgio Morandi, 1890年7月20日 - 1964年6月18日) 20世紀前半に活動したイタリアの画家。20世紀美術史において最も重視される画家の一人である。さまざまな芸術運動が生まれては消えていった20世紀において、独自のスタイルを確立し、静物画を中心にひたすら自己の芸術を探求した画家であった。


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